前編ではザナドゥのゲームとしての魅力的な部分を語りましたが、プレイヤー達にとって深く印象に刻み込まれているのは、フィールドで流れる音楽「LA VALSE POUR XANADU」ではないでしょうか。データ化された電子の迷宮へとプレイヤーを誘う音楽は、あの当時のPCゲームにおける代表的な音楽であったと言っても過言ではありません。
そんな『LA VALSE POUR XANADU』は、当時ログインで「PSG活用教室」を連載していた当時21歳の高橋俊弥氏によって作曲されます。高橋氏によると「LA VALSE POUR XANADU」は、イプセンの戯曲「ペール・ギュント」初演のために作曲した劇伴中の第4幕で使われている「アニトラの踊り」にインスパイアされて作曲されたそうです。また、世界観を一層際立たせるため実際に洞窟まで行き、その時に感じた気持ちも曲に込められているそうです。こうして出来上がった奇怪な音楽は、遊んだプレイヤーの耳に深く刻み込まれ、ファンの間では親しみを込めて「悪魔のワルツ」と呼ばれています。
さらに「LA VALSE POUR XANADU」を含むザナドゥの音楽は、機種によって曲の構成や音源がことなるため、様々なバリエーションが存在しています。和音を長く鳴らすと音がひずんで濁るため、伴奏を小刻みにし、3パート(メロディー、サブメロディー、ベースライン)を常に動かして、独特なハーモニーを生み出す構成にしたPSG音源版。さらに同じPSG音源でも、全ての曲を新たに作り直しているMSX(ROMカートリッジ)版も存在します。そして、各パートがぶつかって音が濁らないよう音域を広げ、スチールドラムを基本に、潰れない低音を強調して硬質な感じにしたFM音源版。その他にBEEP音源版も存在します。
これらオリジナル版(X1・PC-88 mkⅡ/SR・PC-98・FM-7/77/AV・MSX)のBGMがCD等に収録されることは一部を除きありませんでした。しかし昨年の12月22日「BEEP2+sounds」より、現在聴く事が困難となっているオリジナル版に加えて、他社から販売されたMSX版(FD版)を含めた8機種のザナドゥ全曲を、全て当時の実機を用いて収録した「ザナドゥ・サウンド・コレクション」が発売されました。記事を書いている私もほんの少しだけお手伝いさせて頂いた作品だけに、凄く思い入れの作品でもありますので、興味もたれた方は是非一度BEEP秋葉原店にお越し下さいませ。
さて前編・後編と長々とザナドゥの魅力を語らせて頂きましたが、皆様いかがだったでしょうか。この記事を読んで、ザナドゥをやってみたいと思って頂けたなら幸いです。それでは最後になりますが「ザナドゥ・サウンド・コレクション」プロジェクトのプロデューサーを務めた駒林氏と、制作ディレクターを務めた金澤氏からの言葉を「ザナドゥ・サウンド・コレクション」1周年を祝う締めくくりとして皆様へ贈らせて頂きます。
駒林氏
発売から1年が経つかと思うとあっという間ですね。「これはザナドゥのCDが出来るのではないか」と確信させた『ザナドゥ・バイブル』の存在がありました。そしてtk_nz氏やゲーム保存協会の皆様の大きな協力があってこそできたのだと改めて実感致します。若輩者の私が完成まで持ち込めたのはtk氏のお力があったこそですのでこの場を借りてお礼申し上げます。またニコニコ動画で最速クリア動画をアップしていたAst氏、それを無事に遂行したテリーくんにもこの場を借りてお礼申し上げます。
金澤氏(tk_nz)
BEEPさんよりCD制作の依頼を受けた時、これはザナドゥの音楽をサントラとして世に送り出す、おそらく最後のチャンスであろうと直感しました。純粋にザナドゥの一ファンとして、そして個人的に交流のあった作曲者の高橋さんに捧げたいという想いもあり、持てる力を全て注いで制作にあたらせて頂きました。完成までには紆余曲折がありましたが、皆様に満足して頂けるCDが出来たと思っています。ザナドゥファン、ファルコムファン、そしてゲームミュージックファンの皆様に聴いて頂けたら幸いです。