はじめに
PS4さえ買えば完全移植と言われている『グラディウス』や『ダライアス』、完全移植以上とも言われている『バトルガレッガ』が遊べるこの現代で何故人は基板を買うのか…。本稿では「基板を始めたいゼッ!」という方へ向けて、何を揃えれば基板が家で遊べるのかをご説明したいと思います。まあ入門手引き書みたいなものですね。
これさえ揃えば基板はできる!
結論から書くと「電源」「コントローラー」「モニター」「ハーネス」、それと基板が揃えば家で基板を遊べます。この「電源」「コントローラー」「モニター」「ハーネス」が一体になったのが筐体となります。ここからは環境別に具体的に何を買えばいいのかを説明します。
筐体を買っちゃおう
筐体を買えばあとは基板を用意するだけなので非常に楽です。スペースや趣味に応じて、アストロシティ/ブラストシティ、テーブル筐体、駄菓子屋筐体のいずれかを買うのが良いでしょう。
アストロシティ/ブラストシティ
メリット
重さがあるのでコントロールボックスにありがちな「思いっきり遊ぶとコンパネがずれる問題」も解決されます。モニターのサイズも29インチなので迫力も抜群。24kHz(『ゲイングランド』などのSystem24、『バーチャファイター』のmodel1/2、『サイバリオン』を映すのに必要)にも対応していますが、ブラストシティでないと調整がかなり面倒です。それと入手難易度が低い所もいいですね。縦横変換が楽なイーグレットIIという筐体がありますが、かなり高価な為オススメできません。実際に筐体を持つとわかるのですが縦横の変換は面倒で億劫になります。場所さえあれば縦筐体と横筐体の2台買った方が楽です。
デメリット
デカい。置くのにはある程度スペースが必要なので、購入時には部屋のスペースを確実に確保しよう。ブラストシティの高さ1630mmはさておき、幅760mm、奥行939mm、重量101kgは中々のサイズです。コンパネを外すと739mmとなり、これよりドアが狭いと物理的に入りません。
あとは20年以上前のマシンなので電源部分がヘタっている事が多いにあります。その為古い基板が動かない場合があったりしますので、色々な基板を遊びたい場合は補助電源を作成しましょう。基板屋で頼めば作ってくれるかと思います。
テーブル筐体
メリット
何と言っても風情が出るという点でしょう。80年代のゲームを主に遊ぶ場合はアストロやブラストよりもいいかもしれません。またテーブルとしても活用できるので活用方法は色々。値段はピンキリでナムコやセガといったメーカー製でなければ50,000円もあればそこそこの状態のが手に入ります。ただ特にナムコはマニアが多いので2倍以上を覚悟しなければならないのと、そもそも物が無いというのが現状です。
デメリット
画面が大きくても18インチになるので弾幕系シューティングには不向きです。モニターの大きいセガのエアロテーブルというものが存在しますが、鉄の塊なので非常に重く中古相場もお高いのでオススメはできません。
コンパネが多種多様存在し、操作しやすい物とそうで無い物があります。またボタンやレバーの数は後から変えられないので自分の用途にあった物を選びましょう。
駄菓子屋筐体
メリット
まずコンパクトな事が挙げられます。家のどこにでもおけそうな小ささですね。オレンジ色のボディは当時の情景を思い出させるのではないでしょうか。余談ですが昔この筐体を買取りした際にはビックリマンシールが側面にベタベタ貼ってあり、駄菓子屋で稼働していた情景が目に浮かびました。テーブル筐体と同じくレトロなタイトルを動かすにはうってつけです。『くにおくん』『ダブルドラゴン』『ドッジボール部』といったテクノス作品や『ジグザグ』や『クレイジーコング』といったコピー基板を動かすと非常に味わい深いです。
デメリット
大人が遊ぶ上では小さすぎるので遊びづらいという1点に尽きます。ガッツリ基板で遊ぶというよりかは筐体を家に置いてカジュアルに遊びたい方向け。似た様なサイズのミニキュート、SC-19は非常に高価なとなった為、これから基板を遊ぶといった方へはオススメ出来かねます。
コントロールボックスで基板を遊ぶ
筐体なんて置くスペースがないという方へオススメなのがコントロールボックス。省スペースを得る代償として「電源」「コントローラー」「モニター」「ハーネス」をそれぞれ用意する必要があります。
モニターを用意しよう
基板の映像出力は特殊な物が存在し、コントロールボックス付属のビデオ出力だとまともに映らない場合が多々あります。またゲームセンターでの映像はRGBなので綺麗ですがビデオやそれこそRFで映すとボヤっとするので基板の質感が失われてしまいます。じゃあどうすればいいのか、確実に映すにはRGB21pin対応のブラウン管(PC-TV455を筆頭としたPC-TVシリーズやテクナート18インチモニターなど)を買うか液晶ゲームライフのベストフレンドFRAME MEISTERを買いましょう。程度が良くて取り扱いやすいサイズのブラウン管は高騰しておりますので、どうしてもブラウン管へのこだわりがある方や既に21pinモニターがある方以外は、FRAME MEISTERを買った方が良いと思います。お買い求めはBEEP秋葉原にてどうぞ。
基板と密着な存在なのが縦画面です。ブラウン管を縦にした場合は色むらが出るので消磁器を用意しましょう。手軽なのが液晶をアームに付けてフレームマイスターで遊ぶ方法です。左右に簡単に回転できるのでこの上なく便利です。
コントロールボックスあれこれ
コントロールボックスは大きく分けると「一体型タイプ」「セパレートタイプ」「KTB-1」の3種類があります。歴史とかは別コンテンツにお任せするとして代表的な型番とメリットデメリットを表記していきます。
一体型タイプ
古くはKIC-045DX、その後コンボAV、パナカスタムやパナツイン、VEGA9000DX、そしてボードマスターに雷神と色々と存在するタイプです。
メリット
一番売れたタイプなので入手しやすいのが挙げられます。ただボードマスター以外は錆びているのも多く、状態は確認した方が良いでしょう。初期費用で2P同時、あるいはツインレバーのゲーム(『リブルラブル』『クレイジークライマー』等)が遊べるのも魅力です。ボードマスターに関してはパネルがアストロ/ブラストシティなのでアーケードの感覚がそのままです。またVEGA9000DXは『ストII』パネルが主なので少し小ぶりですがこちらもありではないでしょうか。
デメリット
デカいという事に尽きます。結構高さがあるので、台の上に置いて遊ぶ際は少し調整が必要になります。大体床に置いて遊ぶのが一般的な気がします。
セパレートタイプ
電源とコントローラーが別になっているタイプです。シグマのAV7000(電源)とΣ9000TB(コントローラー)が今は主流になっています。古くはLAM-1とかありましたが、入手難易度も高いので素直にAV7000と9000TBにしましょう。
メリット
何と言っても取り回しが良い所です。電源とコントローラーが別になっているので家庭用ゲーム機感覚で基板が遊べます。AV7000に使っている電源は5Vが15A出るのでSystem16Aや大型基板でも問題なく動作させる事ができます。
デメリット
2Pで遊ぶ際には別途9000TBとケーブルが必要となりかなりの出費を必要とされます。ツインレバーのゲームを遊んだり、友達と2P同時プレイをする際にはご注意下さい。またAV8000だとネオジオのスティックがそのまま流用出来るので少しお得ですね。
KTB-1
BEEPでのみ取り扱っている新世代コントロールボックス。必要な部品を自分で組み揃えて使うシステムです。電源はATX電源、コントローラーは家庭用の物がそのまま使えますのでRAPを使うも良し、サターンのパッドで遊ぶも良しといった拡張性も備えています。
メリット
今までのコントロールボックスに比べ新品で安く揃えられ、しかもコンパクトになっています。そしてAV7000の最大の欠点であるコントローラーが高いという点も解決されています。電源は既存のATX電源が流用出来るだけでなく、KTB-PWという専用電源も存在するので『ウォーザード』などのCPS3基板を遊ぶ時も安心。F2やレトロ基板など-5Vを必要とする基板の際にはKTB-5Vを別途購入する必要がありますが、それでも非常に安価に揃えられます。KTBシリーズは説明POPがございますので、そちらにて詳しくご確認下さい。
デメリット
個人が作成している物になるので供給が不安定になりがちな点のみです。JAMMAコネクタを直挿しするのが嫌な方はJAMMA延長ハーネスをご用意下さい。
ハーネス
ハーネスはコントロールボックスや筐体と基板を接続する為のアタッチメントです。エッジコネクタとカードコネクタが線で結ばれている物がまさにハーネスです。
基板屋で買えばハーネスが不要のKTB-1を除きほぼほぼJAMMAハーネスが付属するかと思います。ただ古い基板(体感的には1985、1986年まで)はJAMMA規格ではなく、独自の物が多いので古い基板を買う前に一度下調べをした方が良いです。大体は「専用ハーネス必須」といった文言が並んでいますので備考欄などをチェックしましょう。
中古基板を売ってきた上でよく使った専用ハーネスは以下です。代表的なタイトルも挙げておきますので参考までに。
・ナムコハーネス
『ギャラガ』から『トイポップ』までのナムコの基板は大体このハーネス1本で動きます。例外はツインレバーの『リブルラブル』と3ボタンの『パックランド』のみ。人気の高い『ゼビウス』も『ドラゴンバスター』もこのハーネスさえあれば遊べます。電源の3pinは基本的には不要ですので無くても大丈夫です。映像の6pinは独自のコネクタを使っていますがまだ入手可能です。
・タイトーハーネス
『エレベーターアクション』や『バブルボブル』、『スクランブルフォーメーション』など80年代初期から中期作品に使われている規格です。電源の12pinは入手困難気味なので新品を入手する事にこだわるよりは、中古ハーネスから持ってくるか、売られている変換ハーネスを買った方がいいでしょう。『影の伝説』は44pinだけでなく電源を回した36pinも挿さないと起動しないので購入を視野に入れている方はご留意を。またぱっと見タイトーハーネスで動きそうな『ハレーズコメット』と『べんべろべえ』は独自規格なので注意して下さい。
・コナミハーネス
『スクランブル』や『フロッガー』の時代から『グリーンベレー』の時代まで長きに渡り使われてきた規格です。バブルシステムもこの規格の派生形ですね。古き良きコナミ基板を遊ぶ際には必須の1本。
・セガ sys16/24ハーネス
『ファンタジーゾーン』や『エイリアンシンドローム』、『カルテット』といった作品に使われている規格です。特に『ファンタジーゾーン』は名作だけあり、人気の基板ですので欲しい方や所有者は多いのではないでしょうか。あとは遊ぶまで難易度が高いですが『ボナンザブラザーズ』や『ゲイングランド』もこのハーネスです。
・テーカンハーネス
『スイマー』や『ガズラー』、『ボンジャック』『スターフォース』『アルゴスの戦士』といった作品に使われている規格です。ナムコハーネスと同じく映像の6pinがコネクタになって独立しているのが特徴です。『アルゴスの戦士』はこの6pinがエッジコネクタの反対側に配置されており、映像部分のみ非常に長いハーネスを作らないと遊べません。
・カプコンハーネス
『魔界村』や『エグゼドエグゼス』といった初期カプコンは大体このハーネスです。『1942』と『バルガス』、『ひげ丸』、『ソンソン』は似ている様で別の規格なので注意して下さい。注意したいのはJAMMAと違って8番が欠けており、間違ってJAMMAハーネスを挿してしまう事例が存在する事です。逆挿し防止の為にもJAMMAの7番は埋めた方が良いでしょう。
・Gコネ
『スペースインベーダー』のGコネクタが一時期メジャーな規格となっていた時代もありました。山の字にGNDが端に3つ並び、5番目に12V、9番目に5V…といった特徴的な配置です。コンボAVやパナツインの規格もGコネ派生ですね。細かくは異なるのですが『クレイジーコング』『ジグザグ』『ミスタージャン』『マウサー』『チャンピオンベースボール』など83年以前の基板でよく見られました。
特殊操作系色々
レバーとボタンで遊ぶゲームはザッと説明してきましたが、アーケードならではの特殊パネルを使ったゲームも多々存在します。パネルも色々とありますがメジャー所をご紹介します。
・パドル
『アルカノイド』を代表にしたブロック崩し系に使われたデバイスです。『アルカノイド』のパドルがあれば『キャメルトライ』、『リベンジオブDOH』といったタイトー作品や『ゴークス』などに使えます。カネコのスーパーNOVA用パドルかアルカノイド用パドルが今一番流通しているかと思います。一時期は『ゴークス』のパドルが余っていたと言われていますが今は昔の物語…。セガの『ギガス』や『ブロックギャル』はセンサー基板が別物なので『アルカノイド』パドルを買っても遊べません。
・ループレバー
『TANK』、『怒』、『怒号層圏』、『バミューダトライアングル』といったSNK作品や『ヘビーバレル』に『ミッドナイトレジスタンス』といったデータイースト作品を遊ぶのに必須のレバー。パドルに比べ流通量が少ない為か中古に出ても大分高いお値段になってしまいます。基板屋ではP付きと書いて基板とセットで売りに出される事が多いです。パドルにも言える事ですが単品で入手した場合は安い中古の一体型のコントロールボックスを買ってレバーの代わりにループレバーやパドルを付けるのが手っ取り早いです。
・麻雀
麻雀はAからN、ポン、チー、リーチ、ロン…と多数のボタンがありJAMMA規格では遊べません。中古の麻雀パネルを買ってくるかKTB-MというBEEP秋葉原で販売中の麻雀パネルを購入すれば大体の麻雀ゲームが遊べます。
以下に主に注意しておきたい基板の理由と対応法を記しておきます。
スーパーリアル麻雀PII
部品面と半田面が上下逆です。親切なコネクタだと「PII部品面」と通常部品面の反対側にシールが貼ってあったりします。
麻雀刺客・花のもも子組
コネクタが2つになっています。ピッタリの所でコネクタを切り飛ばせばそのまま使えますが、変換ハーネスを作成した方が良いです。
麻雀殺人事件
コネクタが2つな上に縦画面です。『Gメン'89』も同じく縦です。
スケバン雀士竜子
I/Oボードが必要です。『竜子』の基板と一緒に中古ハーネスが大体付属しますが、買う前に一度ご確認を。余談ですが続編?の『マージャンクエスト』は脱衣に関して2バージョンあり、ROMシールにマークがついていれば脱衣が中途半端なバージョンです。
最後に
色々と書いてきましたが人によって遊びたい基板や環境はそれぞれ異なります。安くない買い物なのでよく調べた上で購入しましょう。また基板屋に相談するのも手です。その時は予算とどういった環境で基板を遊びたいかを伝えた方がよりスムーズに進みます。